機械メンテナンスの課題とオイル分析

機械のトラブル、その多くは

「摩耗・劣化・汚染」から

機械が正常に動かなくなる原因は、実は限られています。

部品の摩耗(すり減り)、オイルや添加剤の劣化(性能の低下)、そして外部からの汚染(不純物の混入)、この3つが主な要因です。これらは一見別々の現象に見えますが、互いに影響し、機械全体の信頼性や寿命に大きく影響します。

オイル分析は、この「摩耗」「劣化」「汚染」という3つの観点から、機械内部の状態を「見える化」できる強力な方法です。

ここではまず、それぞれの現象について見ていきましょう。

摩耗とは?

機械の部品同士は、運転中わずかに触れ合いながら動いています。通常はオイルの油膜によって金属同士が直接こすれないように守られていますが、潤滑がうまくいかないと、表面が少しずつ削られていきます。

このように、摩擦によって固体表面の一部が少しずつ減っていく現象を「摩耗」といいます。

摩耗が進むと、表面からは摩耗粉(摩耗粒子)が発生し、オイルと一緒に機械の中を流れます。この摩耗粉は、どの部品でどのような摩耗が起きているかを教えてくれる「手がかり」です。

オイル分析では、摩耗粉の量・種類・形などを調べることで、部品の摩耗状態や進行具合を推定できます。例えば、軸受けや歯車の摩耗を早めに見つけることで、突発的なトラブルや生産停止を防ぐことができます。

摩耗は、単に部品がすり減るだけの問題ではありません。摩擦・摩耗・潤滑を科学的に扱う「トライボロジー」の観点では、摩耗低減は省エネルギー・コスト削減・機械寿命の延長にもつながる重要なテーマです。

オイル分析で分かること(摩耗)

  • どの部品が摩耗しているかの推定 
  • 摩耗の進行度合い(軽度か、異常か) 
  • 潤滑状態の良否(油膜切れや異常摩耗の兆候) 

これらの目視では分からない「機械内部の変化」を、オイルを通じて知ることができます。 

潤滑油の劣化と汚染とは?

機械を守る潤滑油も、使い続けるうちに性質が変化したり、異物が混ざったりして性能が落ちていきます。

これを「劣化」と「汚染」と呼びます。

どちらも進行すると、油膜が切れて摩耗が増えたり、作動不良を起こしたりと、機械トラブルの原因になります。

劣化とは?

潤滑油は、熱や酸素、負荷などの影響を受けて化学的に変質します。これが劣化です。代表的な要因には次のようなものがあります。 

  • 高温や酸素による酸化反応 
  • 長期使用や重負荷による粘度の上昇・低下 
  • 添加剤の分解や消耗

劣化が進むと、潤滑油は本来の性能を発揮できず、 潤滑不良や油路の詰まり、エネルギーロスの増大などを引き起こします。 

オイル分析で分かること(劣化)

  • 潤滑油の酸化や添加剤の劣化状態
  • 粘度の変化による性能低下の把握
  • 交換時期の判断(まだ使えるか、交換すべきか) 

汚染とは?

潤滑油の中に、水・異種の油・金属粉・砂じんなどの異物(コンタミ)が混ざる現象です。 これらは、外部からの混入や機械内部で発生した摩耗粉などが原因で起こります。

汚染が進むと、油膜が傷ついて摩耗が加速する、 バルブや配管の目詰まり、さびの発生などを招きます。 

オイル分析で分かること(汚染)

  • 水分や異物の混入の有無と程度
  • 汚染源の推定(外部からの混入か、内部発生か)
  • 機械への影響度(摩耗やさびの発生リスク) 

機械メンテナンスの考え方

TBMCBM の違いを知る

機械を長く、安全に使うためのメンテナンスには、主に2つの考え方があります。

TBM:Time Based Maintenance

時間基準保全

内容一定の時間や稼働時間ごとに、定期的に点検や交換を行う方法
特徴計画的に実施できる反面、まだ使える部品を交換してしまうなど、無駄が発生しやすい

CBM:Condition Based Maintenance

状態監視保全

内容機械の状態を監視し、必要なタイミングで点検・交換を行う方法
特徴故障の兆候を早期に把握し、無駄のない保全ができる。代表的な方法が「オイル分析」

CBMは「機械の健康診断」のようなもので、実際の状態を見ながら最適なタイミングで対応できます。振動・温度・赤外線などさまざまな監視方法がありますが、オイル分析はその中でも最も効率的で低コストな手法のひとつです。

オイルは機械内部を循環しており、摩耗や劣化、汚染の情報を全て運んでいます。そのため、オイルを調べるだけで、センサーを取り付けなくても内部の状態を把握できるのです。

機械メンテナンスの課題と、
オイル分析による解決

現場の悩みを「見える化」で解決する

機械の老朽化、人手不足、コストや安全の問題。これらは、どの製造現場でも避けて通れない課題です。

オイル分析は、そんなメンテナンスの悩みを「データで見える化」し、効率的で無駄のない保全活動を支える強力な手段です。

機械メンテナンスの悩みと、オイル分析でできること

老朽化した機械の不調

よくある課題・背景

長年使った機械で故障が増え、修理費や部品調達も大変。できるだけ長く使いたい

オイル分析でできること

オイルから劣化や摩耗の進行を見極め、早めに対策。機械の延命や計画的な保全が可能に

熟練者が減って人手が足りない

よくある課題・背景

ベテランが退職し、保全スキルの継承が難しい。人手も時間も不足

オイル分析でできること

オイル分析を外部委託すれば、省人化・効率化が実現。専門知識がなくても状態把握ができる

メンテナンスにお金がかかる

よくある課題・背景

部品交換や定期点検でコストが膨らむ。まだ使えるのに交換してしまうことも

オイル分析でできること

オイルの状態に基づいて必要なときだけ交換。開放点検を減らし、コストダウンを実現

安全に作業したい

よくある課題・背景

高所・高温・電気作業など、点検時の事故リスクが高い

オイル分析でできること

オイル分析で内部の状態を把握できるため、危険な開放点検の回数を減らせる

データがバラバラで共有できない

よくある課題・背景

記録が紙ベースで、情報共有や傾向分析が難しい

オイル分析でできること

オイル分析結果をデータ化して管理。設備状態を数値で可視化し、チームで共有できる

突然の故障の対応に追われる

よくある課題・背景

予兆がつかめず、緊急対応や復旧に時間とコストがかかる

オイル分析でできること

オイルの変化から異常を早期に発見。故障原因も特定でき、再発防止につながる

故障を未然に防ぎたい

よくある課題・背景

状態監視のセンサーやIoT導入は高コスト。データ分析の仕組みもない

オイル分析でできること

オイル分析なら低コストで状態監視が可能。温度・振動より早く異常を発見できる

環境への負荷を減らしたい

よくある課題・背景

廃油・廃部品の処理コストやCO₂排出を減らしたい

オイル分析でできること

オイル寿命延長や部品交換削減により、環境負荷を抑制。省エネにも貢献

TBMからCBMへのシフトは、「時間で守る」保全から「状態で守る」保全への進化です。オイル分析は、そのCBMを最も手軽に始められる方法です。 

オイル分析は「支出」ではなく

「利益を生む投資」です

オイル分析というと、「費用がかかるもの」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、実際には支出した分以上のリターンが返ってくる投資ともいえます。

上記の図のように、オイル分析をすることで得られるリターンは主に2つあります。

❶ 削減できる費用

適切なタイミングでオイル交換をすることで、不要なオイル交換が減るため、オイル交換にかかる費用を抑えることができます。

❷ 発生しなくなる費用

機械の異常を早めに見つけられるので、故障やトラブルを未然に防ぐことができ、結果として機械設備を延命できます。こうした理由により、機械のトラブル対応や修理、入れ替えにかかる費用が軽減されます。

このように、オイル分析は単に費用をかけるものではなく、コスト削減と安定稼働を支える「投資」ともいえます。

そして何より、定期的にオイル分析を行い、適切なメンテナンスを続けることで
・機械の信頼性が高まり
・お客さまからの信頼獲得
にもつながります。

「機械メンテナンスの課題とオイル分析」の説明は以上です。
オイル分析の基礎知識から詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

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トライボロジーとは?

機械が動くときには、必ず摩擦が起こります。 摩擦が大きいと、部品が摩耗したり焼き付きを起こしたりして、性能や寿命を縮めてしまいます。この摩擦や摩耗を減らし、機械を長く効率よく動かすための学問が「トライボロジー(摩擦・摩耗・潤滑工学)」です。

トライボロジーのはじまり

1966年、イギリスのハンス・ピーター・ジョストが「潤滑の不備が産業に大きな損失を与えている」と報告し、「トライボロジー」という概念を提唱しました。これをきっかけに、世界中で潤滑の重要性が見直されました。

トライボロジーがもたらす効果

  • 摩耗や焼き付きの防止で機械寿命を延ばす
  • 潤滑状態の改善でトラブルを未然に防ぐ
  • 摩擦低減で省エネルギー・コスト削減につながる

オイル分析との関係

トライボロジーを実践するには、摩耗や潤滑の状態を「見える化」することが大切です。 オイル分析はその代表的な手段で、オイル中の摩耗粉や成分を調べることで、機械内部の状態を知ることができます。

つまりトライボロジーとは、「摩擦・摩耗・潤滑を理解し、機械を長く守るための知恵」です。